東京高等裁判所 昭和51年(う)743号 判決
被告人 池田保義
〔抄 録〕
所論につき判断するに先立ち、職権をもって記録を調査すると、起訴状記載の本件公訴事実は、「被告人は、昭和五〇年四月八日ころ勝浦市出水一、二七二番地風俗営業バー「いづみ」こと池田ふで方において、同人が満一八才に満たない児童である宍倉二美子(昭和三三年四月二〇日生)に対し酒席に侍する業務に就かせることを知りながら同女を右池田ふでに引渡したものである。」というものであり、その罰則として児童福祉法三四条一項七号、六〇条二項の記載がなされているにとどまるものであるが、風俗営業を営む者が営業所において一八歳未満の者に客の接待をさせた場合は、刑罰法令である風俗営業等取締法四条の三、七条二項に触れることが明白であることに徴すると、被告人の本件所為を、児童福祉法三四条一項七号に定める構成要件のうち「その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなす虞のある者に、情を知って、児童を引き渡す行為」に該当するものとして訴追した趣旨であると認め得るのであって、公訴事実は特定されていないわけではないが、原判決の判示としては、本件罪となるべき事実として、風俗営業を営む者において一八歳未満の者を酒席に侍する業務に就かせることが風俗営業等取締法の前記刑罰法令に触れる行為であることの認識を被告人が犯行当時有していた事実をも判文上明示すべきであって、これを遺脱した原判決は、児童福祉法三四条一項七号の「刑罰法令に触れる行為をなす虞のある者に、情を知って、児童を引き渡す行為」の判示としては不十分であり、この点、理由不備の違法があるものといわねばならず、所論につき判断するまでもなく原判決はすでに破棄を免れない。
(時国 奥村 佐野)